1. はじめに
2025年6月1日、中国で改正「中小企業代金支払保障条例」が施行されました。本条例は、サプライチェーンにおける中小企業への支払遅延を是正し、取引の透明性と公平性を確保することを目的としています。本条例は支払義務の具体化を通じて実効性を大幅に強化しており、企業実務への影響は小さくありません。本稿では、日系企業が中国ビジネスの中で注意すべき実務ポイントを整理します。
2. 大企業と中小企業
本条例は、大企業が、中小企業から「物品・工事・サービス」を調達し代金を支払う場合に適用されます。「大企業」「中小企業」の区分は、国家統計局が公布した「統計上の大中小微企業の分類弁法」を参照し、業種別に従業員数や売上高で判断されます。例えば製造業では「従業員1,000人以上かつ売上4億元以上」で大企業とされます。まずは、自社と主要取引先の規模判定を再確認することが実務上の出発点となります。
3. 注目すべき義務と契約上の対応
本条例では、大企業に対して複数の義務が課されており、特に以下の点が重要です。
- 支払期限の原則60日以内
合理的な理由がない限り、支払条件は60日を超えてはならず、例外を設定する場合も業界慣行等に即して合理性が必要です。
- 支払起算日の明確化
検収完了を起算点とする場合、その期日を合理的かつ明確に定める必要があります。
- 商業手形等の使用制限
中小企業の同意なく、手形等での支払方法を強制することはできません。
- 遅延利息の適用
契約で別途定めがない場合、日利0.05%(年利換算18.25%)の遅延利息が適用されます。
- 支払遅延の口実排除
法定代表者の変更や内部決済の遅延、契約に明記のない検収申告や決算監査待ちといった内部事情を理由に、支払を遅らせることは認められません。
- 紛争時の分割支払義務
取引の一部に紛争がある場合でも、それ以外の履行部分に影響がない限り、紛争に関係のない部分については遅滞なく支払う必要があります。
- 未払情報の開示義務
支払期限を過ぎてもなお未払いが残っている契約については、件数や金額を企業年度報告に記載し、国家企業情報公示システムを通じて社会に公示する必要があります。
4. 取引先へのアプローチと今後の留意点
中小企業に該当する企業は、大企業との取引で自社が対象であることを明確に伝えることで、適正な支払条件を求めることが可能です。日系企業においては、中国企業との取引を拡大する中で、支払サイトの長さを懸念材料とする声も多く聞かれますが、本条例に基づくルールを交渉の根拠として活用することで、より公正な支払条件の確保を図ることが期待されます。
一方で大企業は、契約書面の整備や支払管理を怠ると、制度違反や信用低下のリスクを招きかねません。政府の通報窓口や告発制度も整備されており、悪質な支払遅延行為は将来的に行政処分や資格審査への影響もあり得ます。
こうした制度的背景も踏まえ、日系企業は今後の取引管理体制を見直す機会と捉えるべきでしょう。
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