中国景気の低迷が続くなか、中国市場に進出している日本企業も少なからず影響を受けています。これまで現地では、日本企業同士の取引が中心だった企業でも、既存の取引先の撤退や市場の変化により、「中国企業との新規取引」に目を向け始めているケースが増えています。しかし、中国企業との取引経験が少ない場合、社内には開拓のノウハウが蓄積されておらず、「どう始めたらいいのか分からない」「人材もいない」といった戸惑いの声も多く聞かれます。
本コラムでは、弊社がこれまでに受けた多数のご相談事例をもとに、中国企業への販路開拓における手順と実務上のポイントを整理してご紹介します。
1. 社内体制の見直し ― 営業部隊の役割を再定義
最初に行うべきは、社内の営業体制の棚卸しと見直しです。これまで日本企業との取引を中心としていた企業では、中国人社員が「通訳的なサポート」や「アシスタント業務」にとどまっていることが多く、主体的に営業・開拓を行える人材が不足しているケースが目立ちます。そこで、以下のような検討が必要です。
- 既存の営業担当者を中国市場向けに職務転換できるか?
- 新たに中国市場に強い営業人材を採用できるか?
- アシスタント業務を見直し、営業活動に使える予算・人材を再配分できないか?
また、営業資料や販促チャネルも中国向けに最適化する必要があります。
- 日本企業向けのカタログや提案書は、そのままでは中国企業に響かない可能性が高い
- Wechatのミニプログラムや、中国向けSNS(微博、抖音など)のアカウント整備も重要な広報手段となる
2. 外部専門家との連携 ― 戦略的に使う「導入サポート」
中国企業と直接やり取りした経験がない場合、最初のアプローチ段階では、現地事情に詳しい専門家のサポートを得るのが効果的です。
ただし、専門家に相談する前に、次のような準備を社内で行っておくことで、相談の質が高まり、費用や時間の節約となります。
- ターゲットとなる業界・企業の整理(誰にアプローチするか)
- 自社が提供できる製品・サービスと希望する支援内容の明確化(何をどう売りたいか)
- 予算とスケジュールの設定
- 専門家・コンサル会社の評価と比較検討
- 専門家と連携しながら実行に移す体制の構築
3. 商談と取引の実行 ― 日本と異なる商習慣に注意
商談の段階では、製品やサービスに関する技術的・業界的な説明は、やはり自社の担当者が直接行うことが求められることが一般的です。外部専門家だけでは、細かな内容まで把握するのが難しいからです。
その際、以下のような点に注意が必要です。
- 中国企業は条件交渉に積極的な傾向があるため、価格・納期・支払条件の詰めが重要
- 進捗報告やフォローアップの頻度を高めることが、信頼構築の鍵
- 契約締結前に必ずリスクチェックを実施(企業調査、契約書レビュー等)
また、社内の中国人スタッフの意見を積極的に取り入れ、さらに、商談や契約の場面では、弁護士・コンサルタントの助言を得ることが、トラブル防止やスムーズな交渉につながります。
4. まとめ
中国企業との販路開拓は、単発的な営業活動ではなく、中長期的な視点での準備と継続的な体制構築が重要です。弊社では、中国ローカルの法律事務所・税理士事務所とのネットワークを活かし、中国市場に詳しい弁護士・税理士・コンサルタントが連携しながら、市場調査・戦略立案から契約交渉、取引後の債権回収までをトータルでサポートしています。
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