近年、中国市場の景気減速を背景に、多くの日系企業が現地での事業縮小や撤退を検討・実行しています。一方で、「今こそ中国市場の顧客を新たに開拓し、ビジネスチャンスを広げたい」と考える企業も増えています。そのような動きの中で、中国企業との新規取引を始める際に欠かせないのが企業調査です。ただし、実際に調査を行ってみたものの、「どこを見ればいいかわからない」「報告書を読んでも判断材料にならない」という声も少なくありません。
本コラムでは、中国企業との取引を検討する上で、最低限押さえておくべき調査項目とそのポイントについて解説します。
1. 登記情報だけでは不十分 ― 実態とのズレに注意
中国企業の登記情報は、日本と同様に基本的な企業情報(会社名、住所、資本金、代表者など)が記載されています。しかし、「登記上の情報=経営実態」とは限らない点に注意が必要です。実際には、以下のようなケースがよく見られます。
- 登記上の住所と実際に事業を行っている場所が異なる
- 経営範囲外のビジネスを行っている
- 資本金の払い込みが未了
- 株式に担保(抵当)が設定されている
- 名義上の株主と実質的な経営者(実質株主)が別人
これらの情報は、表面上のデータだけでは見抜けません。第三者による裏付け調査や実地確認が重要です。
2. 訴訟歴と行政処分の有無 ― 信用リスクの兆候
中国では、「裁判文書網」という公的データベースで、企業が関与した訴訟や行政処分の情報を確認できます。注目すべきは金額の大きさだけではありません。以下のような内容が含まれていないかチェックしましょう。
- 取引先への債務不履行(未払い)
- 売掛金の回収が困難だった事例
- 税金の滞納
- 知的財産(特許・商標)に関する違反行為
こうした履歴があれば、たとえ過去の出来事でも、取引先としての信用に疑問が生じます。
3. 財務データの真偽を見極める ― 異常値・矛盾に注目
中国企業の財務諸表は、全てが公開されているわけではなく、情報の入手に限界があります。仮に入手できたとしても、数値に矛盾や極端な変動がある場合は要注意です。とくに次のような点に注目してください。
- 直近のデータかどうか(古いものは参考にならない)
- 前年と比べて大きく増減している項目
- 「その他未収金」などの曖昧な勘定科目が急増していないか
4. 調査の読み解き ― 専門家の力を借りる
調査レポートの内容が豊富であっても、その情報をどう読み解き、どう判断するかが非常に重要です。
- 実質的な経営者(実質株主)が複数企業に関与している
- 法定代表者が経営する他社が破綻している
- 株式に担保が設定されており、経営に制約がある可能性がある
こうした情報は、経営の健全性や今後のリスクを見極める上で大きなヒントになります。そのため、調査項目の検討段階から、専門家と連携して進めることが理想的です。弊社では、中国ビジネスに精通した中国人弁護士・税理士、日本弁護士が在籍しており、調査の実施から報告書の分析・アドバイスまで一貫してサポートしています。
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