中国は世界第2位の経済大国であり、多くの日本企業が進出しています。しかし、中国の税制には日本とは異なる独自のルールがあるため、進出を検討している企業にとっては、基本的なポイントをあらかじめ理解しておくことが重要です。
本コラムでは、中国でのビジネスを検討・展開している日系企業の皆様に向けて、中国税制の基本と実務ポイントを分かりやすく解説します。
1. 中国の税制の全体像
中国の税制は大きく「国税」と「地方税」に分かれており、主に国家税務総局が管理を担っています。代表的な税目は以下のとおりです。
■国税(中央政府が管理)
- 付加価値税(増値税/VAT)
- 企業所得税
■地方税(地方政府が管理)
- 不動産税
- 土地使用税 など
2. 主な税制のポイント
●付加価値税(増値税/VAT)
中国の主要な間接税で、商品やサービスの販売に対して課税されます。日本の消費税に似ており、仕入れ時に支払った税額を控除できる「仕入税額控除」の仕組みがあります。
- 標準税率は13%
- 一部の製品やサービスには9%や6%の軽減税率が適用されるケースあり
例えば、製造業の企業であれば、部品の仕入時に支払ったVATを控除し、完成品の販売時に発生するVATとの差額を納税します。結果的に、税負担は最終的な消費者が負担する形になります。
●企業所得税
中国国内で利益を得た企業に課される税金で、原則として税率は25%です。ただし、認定を受けたハイテク企業や環境保護関連企業には、15%の優遇税率が適用されることがあります。
日本のように「本社の所在地で課税される」のではなく、中国国内にある拠点(現地法人など)での所得が課税対象となる点が重要です。
●個人所得税
中国では給与や賞与などの個人所得に対して累進課税が適用されます。外国籍の従業員に対しては、給与以外の福利厚生に関連する税制(例えば、住宅手当など)についても適用されるため、税務の管理が重要です。さらに、滞在期間によっても税務上の取り扱いが異なるため、外国人駐在員の管理には注意が必要です。
●印紙税
取引契約書や商業文書に対して課税される税金で、企業が取引契約を結ぶ際には契約内容に応じた印紙の貼付が必要です。
3. 税務申告とコンプライアンスの注意点
中国でビジネスを行う企業には、以下のような税務申告義務があります。
- VATなどの間接税:毎月または四半期ごとの申告・納付
- 企業所得税:四半期ごとの仮納税と、年1回の本申告
- 帳簿・証拠書類の保管:税務調査に備えて、領収書や契約書の整備が必要
中国では、税務調査が比較的頻繁に行われるため、税務コンプライアンスの徹底が非常に重要です。
4. 外資系企業向けの優遇措置
外資企業に対しては、以下のような税制面での優遇制度が用意されています。
- 特定地域(西部地域、開発区など)への進出:企業所得税の軽減
- 象事業(環境保護、技術開発など):優遇税率の適用
5. 日系企業が押さえるべき実務ポイント
中国ビジネスにおいて、日系企業が特に注意すべき実務ポイントは以下のとおりです。
■税務専門家の活用
地域や業種によって税務運用が異なる中国では、現地の税理士・会計士など専門家のサポートが不可欠です。特に税務調査の際には、適切な対応ができる体制が求められます。
■会計システムの整備
中国の会計基準は日本とは異なるため、中国仕様の会計ソフト導入や記帳方法の最適化が必要です。
■税務コンプライアンスの徹底
違反があれば重い罰則が科される可能性もあるため、正確な税務申告と納税の履行が経営リスクの回避につながります。
6. 結び
中国税制を理解し、適切に対応することは、現地ビジネスの安定運営の鍵となります。付加価値税、企業所得税、印紙税などの基本的な税制度を押さえ、日々の申告・納税・帳簿管理を怠らない体制づくりが重要です。
弊社では、中国ビジネスに精通した日本弁護士、中国弁護士、中国税理士が現地にて、税務・会計の実務を含めたトータルサポートを提供しております。中国進出や運営に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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