中国市場への進出や現地での事業拡大を目指す日本企業にとって、「中国企業との取引」は避けて通れません。しかし、日本と中国では商習慣や価値観が大きく異なるため、何も知らずに取引を進めると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。本コラムでは、中国ローカル企業と中国でビジネスを行う際に、押さえておきたいポイントをご紹介します。
1. 契約書に「細かく・明文化」する
中国では「契約書に書いてあること」が全ての基本になります。日本のような「口頭での合意」や「空気を読む」といった文化は通用しません。そのため、次のような点は注意し、必ず契約書に明記しておく必要があります。
- 納期(遅延した場合の対応も含む)
- 交付基準、品質基準、検収の条件
- 所有権、危険負担など
- 支払い条件(通貨、期日、方法、発票など)
- 違約時の対応(損害賠償の範囲、契約解除の条件など)
- 準拠法、管轄など、紛争発生時に問題となる事項
事例1:契約が曖昧だったことでトラブルに
ある日系の機械メーカーが、中国地方都市の部品サプライヤーと契約を結びました。初回納品は問題なかったものの、2回目以降、納品遅れや品質不良が頻発しました。しかし、契約書に納期や品質保証の詳細が記載されていなかったため、相手側の責任を追及することが難しく交渉は難航し、最終的に取引停止となり、別の仕入先を探すために大きなコストと時間を費やすことになりました。
2. 「人間関係づくり」がカギ
中国では、「信頼関係を築ける相手かどうか」が取引の継続性やスムーズな対応に大きく影響します。下記のような積み重ねも、ビジネスの安定性につながります。
- 定期的な現地訪問
- 会食や非公式な交流(イベントへの参加など)
事例2:信頼関係がトラブルを解決に導いた
ある中堅の日本建材メーカーは、中国の建設会社と取引を開始するにあたり、現地に駐在員を派遣し、定期的な訪問や食事の場を通じて良好な関係を築いていました。契約後にトラブルが起きた際も、強い信頼関係があったことで、相手企業は誠実に対応し、結果として契約見直しもスムーズに進み、関係は継続しました。
3. 地域ごとの規制や行政動向を見落とさない
中国では、地域ごとに法律や行政の運用が異なることがあり、予期せぬ規制変更が発生することも珍しくありません。そのため、以下のような対策が重要です。
- 現地政府の動向を継続的にチェック
- 現地弁護士や専門家のアドバイスを受ける
- 法改正や行政指導に備えたリスク管理
事例3:行政動向の見落としが工場一時停止に
ある日系の化学メーカーが、中国地方都市でローカル企業と合弁工場を運営していました。しかし突然、地元政府が環境規制を強化し、操業には再度の許可取得が必要になりました。事前にこうした動きを把握していなかったため、対応が遅れ、工場は一時的に操業停止に追い込まれました。
4. 取引の管理体制
中国ローカル企業との取引には、ビジネスチャンスが多く存在しますが、同時に「文化・制度の違い」という障壁もあります。今回ご紹介した以下の3点に加えて、
- 定期的な信用調査の実施
- 債権回収状況のモニタリング
- 異変を察知したら即アクション
といった基本的な管理体制も忘れず整えることが大切です。
中国で信頼できるビジネスパートナーと長く取引を続けるためには、「相手をよく知り、誤解やリスクを防ぐための対策」が不可欠です。
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