中国税務動向:企業登録抹消に関する実務リスク

2025.10.28

近年、中国市場の成長鈍化を背景に、中国ビジネスの見直しや撤退を検討する日系企業が増加しています。中でも特に注意が必要とされるのが「税務清算」です。税務清算には通常、数か月以上かかり、企業が開業してからの全納税記録を遡って確認されるケースもあります。さらに、全ての清算手続きを完了し、登記を正式に抹消した後であっても、税務当局による調査が入り、追徴課税や罰金が科される事例が報告されています。近年、中国当局は、既に抹消済みの企業に対しても税務調査を行う姿勢を強めています。

1. 【事例】上海税務当局による重大脱税事件の摘発
2025年5月、上海市税務局の第五稽査局は、既に登記抹消されていた「上海悟瀚進出口有限公司」(2023年抹消)に対し、重大な脱税行為を確認し、抹消を撤回して、追徴税・延滞金・罰金を含め、総額8,262.46万元の処分を下しました。

同社は、輸出用の課税商品(石墨、炭素電極、チタン白粉など)について、売上2.57億元を隠匿し、約3,983万元の増値税と企業所得税を申告せずに逃れていたとされています。税務当局は、輸出通関実績と税務申告の不一致をビッグデータ分析により把握し、その後、貨物代理業者などをたどり、ネット上で取引相手を探し出すことで、単発取引ごとに連絡を消去するという同社の巧妙な手口を解明しました。

2. 撤退・清算時に注意すべきポイント
注目すべきは、当局が既に登記を抹消していた同社に対し、「登記抹消の撤回」という異例の措置をとった点です。これは、法人格を一時的に復活させ、税務責任を追及することを可能にする対応です。この対応は、2023年に改訂された「企業注销指引」に基づいており、虚偽資料や詐欺的手段による抹消申請に対して、当局が撤回を可能とする法的根拠に沿ったものです。

この事件は、中国当局が強化している「逃逸式注销(形式的な抹消による隠蔽工作)」対策の一例であり、特に輸出入業や貿易代行業などでは、売上隠匿や虚偽のインボイス(発票)発行などによるリスクが高まっていることが背景にあります。税務当局は、通関データ・銀行取引・発票情報を、AIなどを活用して照合する「スマート監査」を進め、システム上での不整合を自動検出する仕組みを構築しています。

3. 日系企業への示唆
このような動きは、日系企業にも無関係ではありません。形式上の撤退や休眠、清算を行う際でも、最終申告や未完了取引の処理を怠ると、後日、抹消撤回や調査対象となるリスクがあります。特に中国法人を閉鎖する際には、帳簿・インボイス(発票)・通関データの整合性精査、税務登録の正式な完結が不可欠です。

4. まとめ
中国では、企業の登記抹消後も税務調査のリスクが残る時代となっています。撤退企業に限らず、現存する企業においても、税法に則った正確な申告と、適切な監査対応が求められます。

弊社では、中国ビジネスに精通した税務・会計の専門家が在籍しており、日常的な税務相談や精算・清算に関する支援を行っております。税務相談や監査等でお悩みの際は、ぜひご相談ください。

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